市役所の方と打ち合わせをするゆうかさん。登別市のイベント「Be Smile Project(後述)」の映像を撮影するために、イベント全体のイメージを共有する打ち合わせを行った。イベントの当日はイベント関係者としてたくさんの映像を撮影した。イベント映像は、この春進学する桜美林大学芸術文化学群の総合型選抜資料にも使用した。
ーゆうかさんは今、映像を通して地域のプロジェクトに参加しているんですよね。
はい。地元である登別市の「Be Smile Project」というものに参加しています※。このプロジェクトに参加することになったきっかけは、登別市役所の方の紹介です。地域のPR動画をつくりたいと考え市役所の方に相談をしたところ、「Be Smile Project」の動画制作のお話をいただきました。
※「Be Smile Project」
(https://www.city.noboribetsu.lg.jp/article/2020071600075/)
登別市は2020年に50周年を迎え記念行事が行われるはずだったが、すべて延期や中止になってしまった。そのため、少しでも登別市の子どもたちが笑顔になれる企画をしようと立ち上げられたのが、「Be Smile Project」というクラウドファンディング。企画は高校生が考える。ゆうかさんも映像担当として関わった。目標金額は「765万円(コロナ=567をひっくり返す、という意味が込められている)」。
ー地域のPR動画をつくりたいと考えたきっかけはありますか?
学校で実施している「探究学習」の影響が大きいかと思います。「探究学習」というのは個人で取り組くむ学習のことで、自分で取り組みたいテーマを決めて探究できる授業です。週に1~2時間授業時間がありますが、フィールドワークなど、授業外の時間も使って打ち込んでいる人も多いです。私の学校では主に高校1年生と2年生の時に取り組んでいます。
高校2年生の時、学年の「探究学習」の目標が「地域から世界を見る」というものだったのですが、私は映像が好きだったので映像を使って「地域から世界を見る」ということをしてみようと思いました。
最初は地元の特産物や観光名所を紹介する動画を考えていたのですが、何を、どのように紹介すれば興味を持ってもらえる映像になるか、全然イメージがまとまらなくて……。そんな時紹介していただいたのがこの「Be Smile Project」でした。今、高校3年生なので、3月までに時間があったら、もともと考えていたPR動画の方にも取り組みたいなと考えています。
ー地域の方と関わったりと、「探究学習」は学校の外に出て学ぶ機会がたくさんありそうですね。どんな学びや成長がありましたか?
コミュニケーション力が上がったと思います。人とコミュニケーションをとることに苦手意識があるわけではないのですが、「探究学習」をやる前は、コミュニケーションをとるとしても学校の中の人が多いし、学校外でも同世代の人とコミュニケーションをとることの方が多かったです。
でも「探究活動」では映像制作を通し、学校の外に出て様々な年代の方と関わりました。自分と近い年代ではない方とたくさんコミュニケーションをとることができ、コミュニケーション力がついたと感じました。
あとは、ただ好きだという気持ちで始めた映像の活動について、活動を通して技術や知識がつきました。興味だけで終わるのではなくて、興味あるものに対してしっかり自分の頭で考えて、考えを深めて実行する、ということができたのは成長だと感じました。
ー学校外での活動も多そう。行動の幅が広がりそうですね。
私は、やってみたいことがあっても行動に移すことができない高校生でした。「探究学習」をやる前も「映像が好きだ」という気持ちがあったんですけど、好きだと思うだけで何か行動を起こしたわけではありませんでした。「探究活動」をやっていなかったら、今のようにやりたいと思っていたことに本格的に取り組むことはなかったと思います。
ゆうかさん(右)と、ゆうかさんと一緒に映像のプロジェクトを進めたご友人。
映像の「言語に頼らずに」想いを伝えられるところを魅力的に感じ、ゆうかさんは映像制作をしている。
ーそもそも映像に興味を持った背景にはどのようなものがありましたか?
「言語に頼らないコミュニケーション」に関心を持ったためです。私の学校は海外との交流が多い学校で、たびたび留学生が来たり、修学旅行で海外に行ったりすることがありました。高校2年生の時にアメリカとカナダに行きホームステイをしたのですが、ホストファミリーの方が全く日本語を話せない方で。私もそんなに英語が得意な訳ではないので、正直なところ会話に苦労しました。
でも身振りや表情でだんだんとコミュニケーションがとれるようになってきて、最終日にはお互いの国のことや習慣の違いが分かり、すごく打ち解けることができました。もちろん、共通の言語を話せた方が中身のあるコミュニケーションをとれるとは思うのですが、言語に限らずともコミュニケーションできる方法がある、ということをこの時強く実感したんです。
ー「言語に頼らないコミュニケーション」の中でも、映像というツールに関心を持ったことには何か理由がありますか?
その修学旅行中、ホストファミリーと映画を観に行ったことがあったのですが、もちろん日本語字幕があるわけではないので「内容を理解できるのかな?」と不安になったことがありました。でも意外と、登場人物の表情や動き、音楽やアニメーションで内容を理解することができたんです。
言語の方が自分の考えや繊細な表現を確実に伝えられると思うのですが、映像だとどんな言語を話す人にも観ただけで想いを伝えられることができます。また、人によって受け取り方が違うところも、映像のおもしろさだと考えています。
「探究学習」をやる前は「映像への関心」だけだったのですが、「探究学習」を通して映像について調べたり自分なりに考えたりすることで、私の中で「映像を制作する目的」というものが定まってきた気がします。