まずはじめに、文部科学副大臣および大臣補佐官として今回の学習指導要領の改訂に携わった鈴木寛先生(東京大学・慶應義塾大学教授)が基調講演で登壇。高等学校について「相当に大幅な学習指導要領の改訂になった」と話す鈴木先生。その背景には一体何があるのでしょうか。
日本の15歳の学力は世界トップクラス。その一方で、大学教育の段階では「チームを組んで特定の課題に取り組む経験、実社会とのつながりを意識した教育」に企業側が不満を持っているとのデータがあり、社会ニーズに対応できていないと鈴木先生は指摘します。
このような状況から、高等学校では「総合的な探究の時間」などの新科目が生まれることになりました。
同時に指導要領を変えるだけではなく、大学入試の改革も行われています。思考力・判断力・表現力を問う大学入学共通テストが実施されたことで、「学校間で差が出ている。深い学びをしていた学校は点が上がったが、上辺の受験テクニックだけの学校は問題があった」と話します。
教育改革は、これからの時代が「激動の時代」であることも関係しています。
・物質文明、GDP至上主義から「ウェルビーイング」への価値観の転換
・人工知能が人間の知能を上回る「シンギュラリティ」
・「VUCA」=不安定で複雑、未知の状況が常に起こり続ける世界に
このような時代に対して、「学び」によって、パニックに陥らずに対処を考える力を身につけなければいけないと鈴木先生は語ります。「これまでの知識偏重のマニュアル的な仕事=マークシートで測られるような仕事はAIに置き換わる」といい、アクティブラーニング(主体的で対話的な深い学び)の重要性を強調します。
最後に、これからの学校教育の在り方として、良い教授(レクチャー)を目指すのではなく、1on1による主体的な学習・学び合いの支援の重視を示しました。「社会に出ると『先生』はいない。未知と遭遇しながら生涯学び続ける人が求められている」。
質疑応答では、参加した先生から「社会の変化を伝えようとすると説教じみてしまい、生徒の内発的な動機づけが難しい」との質問が。鈴木先生は「知らないことや不安は、生徒に共有していい。それが生徒自身の自己肯定感(成功体験)につながる。でも、先生は未知と遭遇した時にビビらない。『学び方』を知っている姿を見せてあげては」とアドバイスしました。