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楽しさの追体験と高校生が意見を言う場を作りたい。SDGsワークショップを開催した太田美風さんの軌跡

POINT

ディスカバで高校生が対象のイベントを開催した太田美風さん。テーマは「発信力」と「SDGs」。太田さんは新しい環境に弱く、未知のものに恐怖を感じるそう。そんな彼女がイベントを開催した理由とは。そして一歩を踏み出した彼女が、今まさに一歩を踏み出そうとしている高校生に送るメッセージをお伺いしてきました。(取材・文/佐藤碩建)

01.

ーー太田さんは、現在学生団体ASPIREに所属していますが、高校生の頃から課外活動は活発にしていたんですか?

太田:全くしていませんでした(笑)むしろ学校が大好きで、毎日楽しく通っていました。

ーー僕は逆に学校があまり好きではなかったので、そういう生活に少し憧れます。

太田:ありがとうございます。それと、今もですけど、毎日幸せだなと感じています。

ーー「毎日幸せ」と感じられるのは素敵ですね!どうすれば、そういう風に思えるのでしょうか?

太田:悲しいこととか辛いことは起きてるんですけど、私が忘れっぽいので、すぐにそういう辛い記憶を忘れてしまうんですね。だから、ただただ楽しい記憶だけが残るっていう(笑)そのおかげで勉強も全くできないんですけど…

ーー辛い記憶がなくなれば、確かに幸せな記憶で埋め尽くされますね。幸せな記憶って例えばどんなものがありますか?

太田:自分ってすごく恵まれていると思うんですよね。例えば、両親。私が何かやりたいと言った時に、絶対にサポートしてくれます。それは簡単なことのようで難しいことだと思うんですよね。それに出会った人たちにも恵まれていると思います。

ーー先生や友人ですかね?

太田:そうですね。特に学生団体のASPIREに入るきっかけをくれて、現在も手伝ってくださっている山崎先生や、ASPIREで出会った友人です。ASPIREに出会えてなかったら、私の人生は違ったものになっていると思います。

02.

ーーそれくらいASPIREとの出会いが大きかったんですね。人生を変えるようなASPIREとの出会いはどのような出会いだったのでしょうか?

太田:桜美林大学に入学した時に、カリキュラムの組み方を先生が1対1で教えてくれるんですが、私の担当の先生が山崎先生という方で。話していくうちに、山崎先生と仲良くなっていって、私が興味のある話をしたら、ASPIREを紹介されました。実は、山崎先生はASPIREのコーディネーターをしていて「今度韓国で韓国の学生と交流する機会があるんだけど、参加しない?」と言われたことがASPIREに参加するきっかけとなりました。

ーー様々な偶然が重なってASPIREと出会ったんですね。太田さんとASPIREが出会ったのは、運命のようにも感じます。実際に韓国に行ってみてどうでした?

太田:新しい発見だらけでした。そもそも私がASPIREに参加したいと思ったのも、幼少期の頃に経験したあることが関係しているんです。

ーーあること、とは?

太田:私が小中学生だった頃、私の家族はホストファミリーだったので、年に何回か1日から1週間、様々な国の人がホームステイとして滞在していました。その頃の私は英語が話せなかったため、留学生とコミュニケーションをとることができず。また、異文化を知らなかったので、一緒に生活をする中で気づく、彼らの文化に対しても強い抵抗感を抱いていました。しかし、中学生の後半頃から高校生時代にかけて、海外のニュースなどを目にして、ある程度のことを理解できるようになったり、英語を勉強していく中で「もっと英語を学んで海外の人とコミュニケーションを取れるようになりたい。そして異文化を理解して手を取りあっていけるような人になりたい」と思うようになりました。

ーー英語というコミュニケーションツールを使って、海外の人との壁をなくそうとしたんですね。

03.

太田:それがASPIREに参加した理由で。韓国に行って、韓国の学生とコミュニケーションを取る中で、気づいたことは「相手を理解すること」と「否定せずに相手と対話をする」ことがとても大切だったということです。

ーーふたつとも他者との関わりをもつ上で重要なことですね。太田さんがそれにどうやって気づいたのかが気になります。

太田:相手を理解することに関しては、言語の違いが大きかったです。韓国の学生と英語でコミュニケーションを取っていたんですが、私は英語があまり話せなかったんですね。でも、韓国の学生たちもその場に来ているだけあって、理解しようとしてくれていた。お互いがお互いのことを理解しようという姿勢があったんです。だから、とりあえず知っている単語でコミュニケーションをとったり、笑いあったりしていました。

ーー言語が同じ日本にいるとなかなか味わえないことですね。

太田:そうですね。言語が違うからこそ、何かしらのコミュニケーションツールを探していました。ふたつめの「否定せずに相手と対話をする」ことに関しては、韓国の学生とはワークショップをやったんですね。お互い人間なので違う意見を持っているのは当たり前じゃないですか。なのに否定しちゃうともったい無いと思うんです。

ーーもったいないというのは?

太田:韓国の学生とワークショップをしている時に、話し合いをしていく中で「こういう考え方もあるんだ」っていう新たな気づきがあったんですよ。それって相手の主張を否定していたら絶対得られない気づきですよね。

ーー「あなたの意見は、私とは違うから間違いだ」って思うと相手の意見を自分の中に落とし込めないですからね。

太田:あくまでもその人の意見は、その人の人生の中で学んできたことが主張となっていて。それを否定するのは、違うなと思うんですね。でも、相手と意見が違った時に、相手の意見を無理やり飲み込むんじゃなくて「私の意見はこうですよ。でも、あなたの意見はこうですね」と、それをそれとして受け止める。自分の主張を崩すわけでもなく、自分の主張を押し付けるわけでもなく、この人はこういう風に考えてるんだって受け止めるのが大切なことだと気づきました。

ーー相手と意見が違っていても、それを否定するんじゃなくて、自分と一線を引いて、理解する。否定せずに理解することは大切ですね。

04.

ーー2019年の夏になぜディスカバで高校生向けイベントを開催しようと思ったんですか?

太田:理由はふたつあって。ひとつめが、私と同じような発見をして欲しかったんです。というのも、韓国に行ってみて「そういう風な考え方もあるんだ」と新たな発見ができて、それがとても楽しかったからです。


(イベント当日の様子・You Tube)

ーー「楽しさ」を追体験してほしいということですね。ふたつめは何ですか?

太田:ふたつめは高校生が意見を言う場はあってもいいと思っていて。私が高校生の頃は自分の意見を言う場がほとんどなかったのに、20歳になると「もう大人なんだから自分で考えなさい」と急に自立を求められる。その練習がもうちょっとあってもいいんじゃないかなと思ったので、今回開催しました。

ーー高校生に意見を言う場を作ることを大切にイベントを運営したんですね。

太田:グループに分かれて、ディスカッションや最後のプレゼンをするのは高校生。ASPIREの大学生がファシリテーターで入るという形にしました。グループ分けは、SDGsの17のゴールで、高校生が興味のあるもので分けました。

ーーお互いの興味が近いと新たな発見も生まれそうですね。SDGs以外のテーマで「発信力」がありますが、なぜ発信力にしたのでしょうか?

太田:生活していて、あまり発信力は気にしないことですよね。なので、その難しさと大切さに気づいて欲しいなという思いがあります。SDGsについて発表するときに大切なのは、相手にどれだけ考えや、思いが伝えられるか。

それを意識してもらうためにも、最初に発信力とは何かをグループで話してもらいました。「どうしたらうまく発信できるか」「発信力の定義」などを一番最初に話し合ったので、その後のプレゼンでも、そこを意識していたので、すごく思いが伝わりやすいものができたのではないかと思っています。

ーーじゃあ、今回のイベントは成功ですか?

太田:大成功しました!…と言いたいところなんですが、やはり反省点はあって。この企画は私の価値観で作り上げていったものなので、それをメンバーに共有しなくちゃいけなかったんです。だけど私の語彙力のなさで、なかなか上手く伝えることができなくて….。

ーー価値観を言語化するのは難しいですよね…

太田:なので、今回のイベントを通して改めて、私自身も発信力は重要であると気づきました。また、今回のイベントには、私の価値観が詰まっていたので、この企画を作ることもひとつの発信力の形だとイベントを終えて思いました。

ーーイベントの主催者が、イベントのテーマの重要性について気付かされるのは、なかなか斬新…他に何か発見したことはありますか?

太田:人生の中で、無駄なものってひとつもないということです。挫折や失敗などは、マイナスなイメージがあって。その壁に当たっときに「失敗しちゃった。こんなことしなきゃよかった」って思ってしまう人は多いと思うんです。だけど、このイベントを運営していて、失敗や困難の壁に当たった時に私は「でも、これで成長できるな」と気づいたんです。

ーー失敗や挫折などのマイナスの出来事をマイナスのまま捉える人は多くいると思うんですが、そういう人たちはどうすれば、マイナスをプラスに変換できると思いますか?

太田:一度ゆっくり立ち止まってみて「マイナスとは何か」を考えることだと思います。例えば大きなチャレンジをして、壁に当たったときに、乗り越えるか乗り越えないかを、まず選択するじゃないですか。

そうなったときに私はとりあえず乗り越えてみようと思うんです。とりあえずやってみて、「うまくいけばラッキー」上手くいかなければ、その時に色々考える。それが私は好きなんです。「こういう風にしなかったから、うまくいかなかったんだ」っていう発見ができたら、失敗したとしても、それは私の人生にとってプラスになる。なので、本当に全部が意味のあるものだなって考えています。

ーーまさにエジソンの「私は失敗したことがない。ただ、1万通りの、うまくいかない方法を見つけただけだ」ですね。

太田:かっこよく言うとそうかもしれません(笑)

05.

ーー太田さんは今後やりたいことはありますか?

太田:ASPIREのメンバーとしてこれからも精力的に活動していきたいです。今回のディスカバのような、何もないところから新しいものを作ることを継続しつつ、今まで関わってきた企画やディスカバでの企画に対して改善案を考えてより良いものにできるように努力していきたいです。

ーー自分が作ったものにより磨きをかけるということですね。最後に、今活動したいと思っている高校生に向けてメッセージをお願いします。

太田:とりあえず挑戦してみることが大切です。失敗しても成功しても、その挑戦したっていう事実が、人生にとって必ずプラスになると思います。なので、興味があることや、やってみたいことがあれば、とりあえず一歩踏み出してみるのが大切だと思います。

ーーその一歩って「えいや!」って踏み出せる高校生もいると思うんですが、なかなか踏み出せない高校生もいるかなと思っていて、どうすれば踏み出せると思いますか?

太田:慎重な高校生や、私みたいに新しい環境に飛び込むのが怖い高校生は情報を集めるのが良いと思います。周りの大人や友達、大学生でも誰でもいいので、やってみたいものについて、話したりして、情報を集めて、自分が挑戦できるところまで持っていけば、一歩を踏み出せると思うので頑張ってください!

06.

太田さんが企画するSDGsワークショップは3/23(月)~(火)にも開催予定です。ぜひ参加してくださいね!

詳しくはこちら↓↓↓
https://discova.jp/program/20spring-06/

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